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この度は受賞おめでとうございます。(クリスが)受けてみたい愛の告白No.1は「俺にもピノちょーだい」です

ボンクラボンボンハウス(1) (FEEL COMICS)

 

「月が綺麗ですね」

 かの夏目漱石は「I Love You」をこう訳したといいます。著作や記録に残っているものではないため真偽は不明なのですが、それにしてもなんとまあ、遠回しで難しい意訳でしょうか。ただ一方で私は、「あなたと同じ一瞬を目にしていること自体がうれしくて仕方ない」という気持ちが伝わってくる、ピュアでロマンチックな愛の言葉だなと思うのです。(そしてGOING UNDER GROUNDの『同じ月を見てた』を聴き始めます)

 

同じ月を見てた

同じ月を見てた

  • GOING UNDER GROUND
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 そんな偉人発とされる“完全オーダーメイドな愛の告白”に匹敵すると言っても過言ではない愛のメッセージがあるってご存じですか?

 今回は「クリスが受けたい愛の告白ランキング」でNo.1を(一方的に)贈り(つけ)たい、『ボンクラボンボンハウス』をご紹介します。 

ボンクラによる、ボンクラのための、家づくり

 『ボンクラボンボンハウス』は、主人公の千代田一樹(カズキ)と元リフォーム屋の栄吉、美容師の聖大の三角関係を描いた恋愛作品です。

 

[まとめ買い] ボンクラボンボンハウス

 

 やりたいことがあって東京の大学に進学したカズキは、お好み焼きを焼く日“も”あるお好み焼き研究会に属し、それなりに楽しく過ごしていました。そんな彼女はある日地元へ帰り、友達のオキちゃんと行ったカラオケで栄吉と出会います。そこでカズキは家庭環境が複雑だった栄吉の目に“親の金で遊んでいるヤツ”として映り、出会って速攻嫌われてしまいます。

 そんな親の金で遊んでいるように見られたカズキですが、実は親に黙って大学を辞めていた事実が発覚。「単位を取るためだけに大学に通い続けるよりも有意義なお金の使い方があるのではないか」と思った彼女なりの、勇気ある決断でした。

 そんな彼女に父は「有意義なお金の使い方を見せてみろ」「ただし今後ビタ一文も出さない」と言って、残り2年間の学費にあてる予定だった200万円をカズキに手渡します。

 

 さて「有意義なお金の使い方がある」と主張したカズキ。何か壮大な夢があるのかと思いきや、「アイス食べてマンガ読んてゴロゴロしてたい」と言うではありませんか。はたから見たらニートなその理想を“自立”したうえで叶えるために彼女は、“おばあちゃんがのこした美容院を改装して住むこと”に決めたのです。

 意気揚々と理想の住まいづくりに期待を膨らませるカズキですが、親からもらった200万円が実は無敵の額ではないことに気がつきます。そんな彼女のもとに兄が連れてきたのが、友人で美容師の聖大でした。新しくオープンするサロンの物件を探していた聖大との出会いによりカズキは、家賃収入を得られることに。

 そんな聖大のサロンの内装担当者として連れてこられたのが、カズキが気まずい出会いを果たした栄吉でした。しかし家づくりが好きな栄吉は、カズキの住み家の改装も手伝ってくれることとなったのです。

 

ボンクラボンボンハウス 相関図

 

 カズキの家のリフォームと聖大のサロンの内装が進むのと同時に、3人の恋愛模様にも変化が訪れます。そんななかで、あの“愛のメッセージ”が投下されたのです……。

山積みになったマンガ。お気に入りのソファ。テーブルにはピノ

 カズキは栄吉と一緒に改装の計画を立てていました。うわべだけのオシャレを並べるカズキに栄吉は、そこで暮らす自分をイメージすることが大事だとアドバイスします。

 そして後日カズキは、サロンのアイテムを物色しにアンティークショップへ行く栄吉と聖大についていくことに。そこでカズキはふと腰かけたソファに、“暮らすイメージがわいた”と一目惚れ。しかしそのソファは18万円と、資金の少ないカズキが簡単に手を出せるものではありませんでした。そんなカズキに栄吉は「似たような鍵では扉は開かない」と、ソファを買うようにすすめます。

 

冬の——
あったかい昼下がりにー
本棚からマンガ30冊くらい選んで——
アイス食べながら…
あっ 漫画中はピノがいいな
猫がヒザに乗ってくるから動けなくなるんだよね
そうこうしてるうちに日が暮れて——
あー今日も楽しかったなって
寝る。
最高。
(『ボンクラボンボンハウス』home.10より引用 ©ねむようこ/祥伝社)

 

 栄吉のあと押しでソファを購入したカズキは、家の改装を手伝いに来た彼にそのソファで過ごす理想の1日をプレゼンします。そして幸せそうに“暮らすイメージ”を語るカズキに栄吉は、こう一言放ったのです。

 

俺にもピノちょーだい
(『ボンクラボンボンハウス』home.10より引用 ©ねむようこ/祥伝社)

 

おめでとうございま~~~す!!!
(クリスが)受けてみたい愛の告白ランキング1位受賞決定です!!! 

ドンドン!!!
パフパフ~~~!!!

 

  だって目の前の人がえがく幸せな未来に自分もいたいって! つまりは! そういうこと! じゃないですか!?!?!?

 もともと私は、えいきっつぁんのたっぷりのやさしさを内包した厳しさに惹かれつつあったのですが、このセリフで完全に落!ち!ま!し!た! 大好き! 愛してる! 月が綺麗ですね!

 しかもそのシーンの描き方も秀逸で、真っ白な背景の中にソファに座ったカズキとその横にいる栄吉だけが描かれているんです。もう、ふたりにしか見えていない世界がそこにあるじゃん……。カズキがうらやましい……。

 

 さて、こ~んなにも甘~い愛のメッセージが出たわけです。さぞやカズキと栄吉のラブラブっぷりが炸裂するかと思うじゃないですか。しかしこの時点で、栄吉もカズキもお互いのことを好きという自覚はありません。ああ、タチが悪い。

 なにより、無自覚でこんなことを言っちゃうえいきっつぁんは重罪です。でも大好き! 愛してる! 月が綺麗ですね!

 このシーンを見てからしばらくは、何かをしていてもこのページに戻ってきてはベッドで足をバタつかせる、を繰り返していた私です。 

ふたりにしか分からない、至高の愛のメッセージ

 愛を伝えるのに「愛」を使うストレートな告白もとても素敵です。最近そんなイベントいつ起こったかなと記憶をさかのぼれない私でも、きっと「好きだ」「愛してる」と言われたらドキドキしてしまうと思います。

 ただ「俺にもピノちょうだい」「月が綺麗ですね」といった、その時のふたりにしか分かり合えないもの、いわば“ふたりの合言葉”のような愛のメッセージは、あまりにも特別感が大きくて愛おしすぎると思うのです。

 そんな特別愛おしい愛のメッセージ砲を体験できる『ボンクラボンボンハウス』。読んだ後は、「自分なら今のパートナーに何と伝えるか」なんて考えてみるのも楽しそうです。