40巻って並べたら
ちょっとしたタモさんだって
眠れるスペースあるよ!!
眠っていいともだよ!!
※『銀魂』第四十三巻(金魂 第一訓)より引用 ©空知英秋/集英社
ねえ、銀さん。
第四十三巻でこういっていたから、完結記念に全七十七巻きちんと並べてみたけれど、ちょっとしたタモさんより身長が小さなちょっとしたクリス(158cm)でも、眠るにはちょっときついスペースだったよ。
ということで、2004年に週刊少年ジャンプで連載が始まり、ジャンプGIGA、公式アプリと終焉の地を求めるように続いていた『銀魂』が、2019年8月4日に最終巻を出して完結しました。
15年。
失礼承知で言わせていただきますと、連載当初は打ち切りになるギリギリのラインを行き来していたという作品がこんなにも続くなんて、思ってもみませんでした。
コメディだけどメッセージがあるアニメに撃ち抜かれた、18の夕方
私が最初に『銀魂』と出会ったのはアニメでした。
私が高校生だった頃、布団をリズミカルにたたきながら罵詈雑言を吐きまくってニュースを騒がしたおばさんがいたんですが、それをおもっくそパロディしている変なアニメがあったんです。それが銀魂なんですけど。
万事屋の愛犬 定春がいちご牛乳を飲んで大きくなってしまい、街の人々やメディアからたたかれて激高した少女 神楽が、「帰れ! 帰れ! さっさと帰れ!」と騒音おばさんさながらの三三七拍子パロディを披露したときには、もうすっかり銀魂のトリコに。
そしてただのパロディがおもしろいコメディアニメかと思わせといて、それだけで終わらせないところに、さらに撃ち抜かれました。
捨てる? バカ言うな。
途中で放り出すくらいなら最初からしょい込んじゃいねえさ。※TVアニメ『銀魂』第1期 シーズン其ノ壱 45話「愛犬の散歩は適度なスピードで 」より引用 ©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス
マナーを守れねえ飼い主にペットを飼う資格はねえぞ。
※TVアニメ『銀魂』第1期 シーズン其ノ壱 45話「愛犬の散歩は適度なスピードで 」より引用 ©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス
この回では“飼い主による飼育放棄”に、はっきりとNOの姿勢を見せてくれた銀魂。なにより「どんなことがあっても、定春は万事屋の家族だ」と言う、銀さん、新八、神楽の姿にホロリときました。
銀魂を知るまで“アニメを見る”という習慣のなかった私。気付けば毎週決まった時間に家でアニメを見るようになり、お年玉貯金で原作漫画の大人買いも即座に果たしました。
すんなり終わらない、が銀魂らしい
18歳の頃に出会い、30歳を迎えてもなお続いていた銀魂。その作品が終わると耳にしたときは、とてもとても寂しい気持ちでいっぱいでした。
でも全然終わんないんですよ、銀魂。
“終わる終わる詐欺”と揶揄されることの多い銀魂ですが、実は原作漫画に関していえば、連載終了を発表しそれが延期されるまでは一度もこの詐欺を働いたことはありませんでした。すべてはアニメのせいなんです。
※TVアニメ『銀魂』第1期 シーズン其ノ参 125話「最終章 突入!(酔ってなくても酔ったふりして上司のヅラ取れ)」 ©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP
まずは3年目の125話『最終章突入!』。最終章突入なんていうものだからあと数回、まあせめて1カ月くらいかなと思うじゃないですか? しかし新八の口から告げられたのは、2クール分の期間、残り半年。最終章だからと気合を入れてのぞんだ銀さんと神楽は一気にやる気をなくし、エンディングと次回予告を流した挙句、30分の枠に対し6分半で番組を終わらせようとしたことがあります。
※TVアニメ『銀魂』第1期 シーズン其ノ参 150話「長いものには巻かれろ!!」 ©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP
また「アニメ銀魂を偲んで」と始まった3年目の最終回。4年目の放送が決まったにもかかわらず、当時の制作会社サンライズが“あんなこと”になり、急遽最終回を迎えなければならなくなった虚しさを全面に押し出した緊急特番が放送されました。
ちなみに内容は、原作が終わっていないアニメの最終回なんてこんなもんという無駄しかないストーリー改めヱヴァンゲリヲンの最終回。そして蓋を開ければ原作ストックが足りないため、とりあえず放送をいったん終了しストックがたまった頃に再び放送を再開するという制作側の魂胆だったことが判明。アニメ丸々1話を使って、制作会社のサーバーが落ちる寸前、放送局の電話が鳴りやまないという事態につながる詐欺を働いたわけです。
※『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』©空知英秋/劇場版銀魂製作委員会
そんな詐欺を繰り広げてきた銀魂ですが、1期4年目のラストは本当にあっさりと。クリスマスの話でテレビシリーズは終わり、『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』の大ヒットで本当に銀魂のアニメは終了しました。一旦は。
※TVアニメ『銀魂'』252話「ごめんなさい」 ©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス
そして2011年。『銀魂'』と毛をはやして新シリーズがふわっと始まりました。このシリーズの最終回サブタイトルは「ごめんなさい」。そのままの流れで傑作選『よりぬき銀魂さん』と3つの話が“延長線”として放送されました。
※『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』©空知英秋/劇場版銀魂製作委員会
そしてこの延長線放送のタイミングで発表されたのが、『劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』の公開。「アニメ『銀魂』ラストエピソード」と銘打たれた本作は、そのコピーの通りアニメの完結編として描かれるとのことでした。
原作者空知英秋氏による描き下ろし完全新作エピソードということもあり、さんざんだまされてはきたものの次こそ本当に終わりなんだなと思わされたし、幕引きとしては素晴らしい作品だと思っていました。当時は。
しかしその後、2015年から新シリーズの放送があると発表されます。あそこまで完結、完結って言っていたのに、フワっと新シリーズをはじめちゃうんです、銀魂って。
※ TVアニメ『銀魂゜』第266話 「一時停止はうまい具合には止まらない」©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス
そして始まった新シリーズ『銀魂゜』。1話目の冒頭では、完結編後のアニメの裏側を赤裸々に号泣議員風に説明する謝罪釈明会見が放送されました。そしてこのシリーズのラストは原作でも人気の「さらば真選組篇」。主人公たち不在のまま「俺たちの戦いはこれからだ」で終わりを迎えます。
もちろんこのままでは終わらず、新シリーズの放送が決定。
ハイ、そんなわけで 何度目だ銀魂、ゆるっと再開!
※TVアニメ『銀魂.』317話「化物と化物の子」より引用 ©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス
制作サイドが自らのことをネタにしつつ、「ギルガ~メッシュ♡」という銀さんのセリフとともに深夜帯での放送が始まります。
※TVアニメ『銀魂.』317話「化物と化物の子」 ©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス
シリアスな「烙陽決戦篇」から始まり、放送中には「銀ノ魂篇」の放送が発表され、いよいよ本格的に終わりに向かっていることを感じさせられました。
※TVアニメ『銀魂.』367話 「悪役にもやっていい事と悪いことがある」 ©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス
し・か・し!!!
「銀ノ魂篇」のラスト。新八がめちゃくちゃかっこいいシーンで「ハイ、カット」と銀さんの声がかかり、緊急特番“銀魂終わる終わる詐欺裁判”が始まります。めちゃくちゃシリアスな話からの、アニメ制作のかなり深ーい裏側を洗いざらい吐き出し、かつ原作者の謝罪ではない謝罪でアニメ銀魂は再び、一旦終了したのです。
こんなことを繰り返してきたTVアニメのせいで、一度も終わる終わる詐欺を働いたことがない原作もそういう作品だとくくられるように……。
実際に私も、2018年の夏に「あと5回で終わる」と告知された時は「どうせ終わらないんでしょ?」という気持ちがありました。
で、その思いを裏切らないのが銀魂でして、全力でゴリラが暴れまわる回があったかと思えば、最終話なのにテニプリっていいな~、と他の作品をリスペクトした挙句、結局終わらないまま新天地GIGAでようやく完結。かと思いきやここでも終わらず、ついにはアプリという最終奥義まで繰り出してくる始末。 いや、終われよ。
しかしこの「終われよ」というファンのツッコミすらも巻き込むところが、銀魂らしいなと。最後の最後で“終わる終わる詐欺”すらも自分のものにする空知先生に、私はただただ感服しました。
銀魂の“みんなで危ない橋を渡る感覚”が好きだった
銀魂は、原作者の空知先生が親に指摘されるほど、困った時は下ネタに走りがちな作品でした。そしてアニメもそこをかなり忠実に表現していたため、子どもに見せたくないTV番組の常連でもありました。さらにパロディも過激なため、某議員をネタにした回は初回放送後の再放送が許されないという事態に。
もう何度「もう、危ないよ!」「裏で偉い人に起こられている人がたくさんいるんだろうな」と思ったことか……。しかし銀さんを筆頭に大切な人たちのためにやるときはやる個性豊かなキャラクターたちがいきる人情噺を成り立たせるために必要な、危ない橋渡りだったのだろうと思います。
ギャグ回ももちろん好きなのですが、数々の長編がとにかくかっこよくて。どの話が好きかと問われると回答に困るくらい名作揃いなんです。そして何より、完ぺきじゃない、どこまでも人間味あふれるキャラクターたちが大好きでした。
全77巻。読み始めるとなると長い時間を要するでしょう。しかも銀魂は、文字が多いマンガだといわれています。キャラクターも多く、最終話に向けて設定がどんどん難しくなるため、最後まで追えない人もいるのも無理はないなと。
しかしそれを乗り越えた先には、素晴らしいラストが待っています。このラストを見届けるために私は12年銀魂を追いかけてきたんだなと思えました!
こんなラストを描けるのは、キャラクター一人ひとりを愛し、終わることを誰よりも恐れた空知先生がいたからこそだと思っています。
映画なり漫画なりアニメなり見てると必ず終わりがあるじゃないですか。散々感情移入してたのに急に自分だけポーンっと外にとり残される。あのさびしいカンジがすごく嫌で「待ってくれ俺も連れてってくれあっちの世界に」もうこれだけきいてると完全にイっちゃってる人ですがそういうカンジになるんです僕は。
※『銀魂』第十四巻作者コメントより引用 ©空知英秋/集英社
なんだかまだ終わっていない感じのある銀魂。というより、終わっていないんですよね。
ほら、完全新作が劇場版として決まっていますし。8月の発表では、まだ内容も決まっていないということでしたが、きっと水面下では動いてくれている、はず!!
ということで、公開の発表を心待ちにして、まだしばらくは生きたいなと思っているところです。
最後に、空知先生。
こんなにも長い間、ときに笑える、ときに背中を押してくれる、ときに泣ける、ときに心配させられる、そしてとにかく熱くなる作品を、チ☆毛がたくさん落ちている(らしい)お部屋から届け続けてくれて、
ありがとうきびうんこぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!
銀魂は永久に不潔です!!!!!
追伸
冒頭で全巻並べたと言ったあとに言うのもなんですが、なぜか18~20巻と36巻がないので、私の知り合いで銀魂集めていないのにこの巻だけあるんだよなという人がいらっしゃいましたら、ご返却のほどお願いします。