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アオタケから受け取った襷を、あなたへ

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こんなにも好きなことを言葉にすることが難しくて、でも書きたい、と思ったのは久しぶりかもしれません。

2018年10月から2クール放送されたTVアニメ『風が強く吹いている』が、これ以上ない素晴らしいゴールを魅せてくれました。私は今、このアニメがこの世に生まれてきてくれたことに感謝してもしきれない気持ちでいっぱいです。

 

箱根駅伝を目指す物語。ただし、無謀

 

毎年1月2、3日に開催され、多くのドラマを生み出している「箱根駅伝」。感動がある反面、どの区間も約20kmあるそのレースは過酷を極めます。

もしもこの大会に出場資格10人ギリギリ、しかもそのメンバーのほとんどが陸上長距離未経験者で出場するチームがいたとしたら?

『風が強く吹いている』は、こんな無謀な挑戦を描いた作品です。

 

『10人目の男』

 

「なあ!走るの好きか!?」

全力で夜の住宅街を駆け抜ける主人公 蔵原走(カケル)にこう語りかけたのは、どてらを羽織りママチャリで並走してくる謎の男 清瀬灰二(ハイジ)

とある事情によりお金と住む場所に困っていたカケルは、「金は払える時でいい」というハイジの言葉に導かれるまま、学生寮(アパート)“竹青荘”、通称アオタケに連れていかれます。

アオタケにはハイジと同じ寛政大学に通う、平田彰宏(ニコチャン)岩倉雪彦(ユキ)坂口洋平(キング)杉山高志(神童)ムサ・カマラ(ムサ)柏崎茜(王子)城太郎(ジョータ)城次郎(ジョージ)の9人の学生が住んでいました。

10人目の入居者が決まり満室となったアオタケでは、カケルの歓迎会が開かれます。

 

「この10人で、頂点を目指そう。」
「出よう、みんなで。箱根駅伝に。」

そこでハイジが口にしたこの言葉から、アオタケの「頂点」を目指す物語が始まります。

 

現実離れした野望に、引く

今回私は、TVアニメ『風が強く吹いている』の魅力を届けたい一心でこのブログを書いています。しかし実は最初、この作品が苦手でした。なぜなら、あまりに強引なハイジを理解できなかったからです。

 

実は寛政大学陸上部部員寮だった、竹青荘。そして、この事実を知らなかったハイジ以外の住人たち。ハイジはそんな住人たちに「入居届が入部届だからみんな陸上部ね」と追い打ちをかけるのです。

もちろんアオタケの住人たちからは、「そんな手続きはしていない!」「それって、詐欺…」と、不満や戸惑いの声が噴出します。その日アオタケに足を踏み入れたばかりのカケルですらも「箱根なんて、絶対無理だ」と語気を強めるほど。

もちろん私は、これらのメンバーのコメントに同意しかできなかったため、物語のスタート地点ではこの作品にのめりこめませんでした。 

  

『花、一輪』

 

しかしアオタケの住人たちは、ハイジの熱心かつ半強制的な口説き落と(脅)しに敗北。しかもメンバーたちは、ハイジから箱根に集中するための「午後の本練習」と「バイト禁止令」を告げられます。

私は、就活セミナーを理由に本練習への参加を拒否したキングへハイジが言い放った「それはズラせないのか」というセリフに嫌悪感すら抱きました。人の人生を何だと思っているんだ、と。 

 

ではなぜ、そんな嫌悪感すら覚えていた作品に、こんなにものめりこんだのか。

それは、「自分の速度」と「相手の速度」を信じることで強くなる物語だったからです。

 

信じることが、自分とみんなの強さになる

『危険人物』

 

私は、アオタケの「不揃いな感じ」がとても好きです。

育ってきた環境や好きなことは、もちろんバラバラな彼ら。お互いのことを知ってはいても、深く干渉せず自分の生活を妨げるときのみ文句を言うくらいの距離感。そんなたまたまひとつ屋根の下で暮らしていただけの大学生同士がいきなり、「箱根駅伝を目指す!」と言われ団結することは難しいと思います。

私は、こんな彼らの「あくまで他人」から始まる物語に、リアルを感じていました。

 

『こぼれる雫』

 

箱根駅伝を目指すとは思えないタイムしか出せていない人がいても、箱根駅伝なんて夢物語だと思っている人がいても、「この人たちが仲間かどうかは分からない」と言う人がいても、その考えや姿勢を咎める人はアオタケにはいません。

それぞれのメンバーの中にあるのは「俺は俺だ」「あいつはあいつだ」という価値観だけ。そしてその価値観は、相手への無関心ではなく「相手を信じる気持ち」からくるもののように感じられました。

 

『そして走り出す』

 

また、アオタケのメンバーは一人ひとりが導きあう存在であったことも、この作品の魅力の1つだと思っています。

「頂点を目指す」とアオタケのメンバーたちを箱根駅伝という夢に巻き込んだハイジですが、彼もまた「走ること」や「頂点」の意味を模索するメンバーの一人でした。

みんなで「走ること」と「頂点」の意味を追い求めたからこそアオタケは、お互いがお互いを導く存在になりえたのです。

もしハイジがこれらの意味を知っていたら、アオタケは箱根駅伝に出場すらできていなかったと、私は思っています。

 

『そして朝』

 

「走ること」も「箱根駅伝を意識すること」も「仲間になること」も、最初は何もかもがバラバラだった、アオタケ。

しかしお互いがお互いの速度を信じることで、彼らの異なる速度は少しずつ、でも確実にそろっていき、「強さ」にも磨きがかかっていきました。

「俺は、できる」が「あいつは、できる」になり、「みんなで、できる」へと広がっていく。『風が強く吹いている』で描かれた「みんなで強くなる過程」には、現実的だからこその美しさがありました。

  

「走る」を通して、彼らの「生きる」を見た

それぞれの速度を信じみんなで強くなったアオタケは、迎えた箱根駅伝本番で、模索してきた「走ること」や「頂点」の意味にたどりつきます。

そんなメンバー一人ひとりがたどりついた答えは、作画でも細かく描き分けられていたように感じました。 

 

『解き放つ時』

 

最後まで走ることが嫌いだった王子の走るシーンでは、彼の少し下がった目線に広がる道路が長めのカットで描かれています。自分を信じて待つ仲間のもとへ一歩一歩確実に進む王子らしい強さは、淡々とした描写の中でより一層映えていました。

 

『壊れても』

 

まわりの風景から浮くぬるっとした作画と目元のアップが印象的だったのは、5区に最悪のコンディションで臨んだ神童のシーン。違和感のある作画がまっすぐ前を見る神童の目を引き立たせ、「待っているみんなに襷を繋ぐ」という彼の想いを強調していたように感じます。

 

このように箱根駅伝本番では、メンバー一人ひとりがたどりついた「走ること」「頂点」の意味が、これまでの物語に絵の力が加わることで明確に伝わってきました。しかも、「走る」というよりも「生きる」という言葉が似合う形で。

彼らの「生きる」姿は、私の胸を熱くし、そして勇気を与えてくれました。

 

ちなみにこの作画の描き分けに関する記述は、あくまで私個人の感覚です。制作陣のみなさんにこのような意図があったかどうかは分かりません。しかし、アオタケの一人ひとりの個性や強さを丁寧に描いてくれた皆さんであることは、間違いないなと思っています。

 

アオタケの完走を見届けた、今

最終話が近くになるにつれ私の中では、アオタケの完走を見届けたい気持ちとずっと彼らの走りを見ていたい気持ちが交錯していました。

 

そして迎えた最終話。「責任を持って締める」と言ったハイジが走る10区、そしてアオタケのゴールを見届けた私は、覚悟していたほどのさみしさを感じませんでした。

ハイジがゴールテープを切った瞬間、彼の肩にかかる襷が、ともに走ったアオタケメンバーはもちろん、彼らの挑戦を支えた商店街や後援会、彼らの走りを見ていた人、そして視聴者へと継承されたと感じたからです。

それくらいこの“終わりでなく始まりを感じさせるラスト”には、大きな希望がありました。まあ、一緒に住んでいる愛猫雛が近寄ってこなくなるほどに、涙は止まりませんでしたが…(笑)。

 

『一人じゃない』

 

アオタケがたどりついた「頂点」を見届けた、今。

王子、ムサ、ジョータ、ジョージ、神童、ユキ、ニコチャン先輩、キング、カケル、ハイジが繋いできた襷を、私も受け取りました。

私は彼らから受け取ったこの襷を、『風が強く吹いている』をまだ知らない誰かに繋げられたらいいな、と思うのです。

 

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▼オープニングも、とってもいい!

 

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